







完成:2021年11月
敷地:鹿児島県奄美市
用途:飲食店
構造・規模:木造2階建て
敷地面積:28.54㎡(8.6坪)
建築面積:20.24㎡(6.1坪)
延床面積:39.86㎡(12.0坪)
構造設計:円酒昂/円酒構造設計
施工管理:青井実/アオイ・ホーム
建築写真(夕景):©石井紀久
奄美の中心市街地・屋仁川通りの端の、中心部に比べやや薄暗い印象を受ける場所に位置する、飲食店専用テナントの計画。
店内はカウンターのみの小さな飲食店舗で、内装仕上げは施さずに借主が自由に作り上げることができるようになっている。
建築面積わずか6坪・内部を仕上げずに引き渡すという条件から、ファサード(=外皮)によって街路空間と内部空間に影響を与えることを命題とした。
ここでは夜の屋仁川通りの風景イメージを構築しているきらびやかな【看板】というエレメントのあり方と、現在の屋仁川通りの【町並み】の関係性を再解釈し、建築のファサードとして構成することを試みている。
店舗の内部を浮び上がらせるように光で縁取った開口部は、平面アイコンとしての看板を超え、新たな店舗のアイデンティティとなると考えた。従来の【文字・ロゴ情報+光】という看板のあり方から、【店舗内の雰囲気や賑わい】という看板のあり方へのアップデートを提案している。
同時に、縦長のガラスに面した室内に設けたボトル棚をライトアップすることで、ボトルが飲食店の顔とも言えるべき存在として屋内外にその存在感を主張するようになっている。これも新たな看板のあり方の一つの提案である。
これらの明かりによって建築そのものが光を放ち、その光によりこれまで薄暗かった屋仁川の周縁の街路に光を灯す。
外壁は顔料に炭粒を混在したムラの大きい左官系塗料で仕上げ、看板が持つ【街灯】の役割を建築全体が持つ際に、その光が強くなりすぎず柔らかくなるようにコントロールしている。
また、この靄がかったような外装は、空が昼から夕に切り替わるうつろいの中で溶けていき、夜は自らの光に当てられることでより奥行きを増すような時間軸をイメージしながら色を選定した。
この建築を街路を照らす『提灯』のような存在にしたいというオーナーの願いを背負い、いまも屋仁川通りを照らし続けている。