佐仁の家

完成:2024年1月
敷地:鹿児島県奄美市笠利町
用途:別荘(簡易宿泊所)
構造・規模:RC造1階建て
敷地面積:2,023.67㎡(612.2坪)
建築面積:125.88㎡(38.1坪)
延床面積:118.91㎡(36.0坪)
構造設計:円酒昂/円酒構造設計
施工管理:政和豊+池畑嘉教/政建設
建築写真:©長谷川健太

奄美大島の最北端、アダンの防風林に囲まれた海の眼の前に位置する小さな建築である。
この建築は、宿泊施設 兼 オーナーの将来の住まいであると同時に、建材の加工販売を生業とするクライアントが扱う建材のショールームとしての役割も担う。このように様々な顔を持つ建築として計画することが求められたため、機能や用途に捉われない風土から導かれる建築の原型や成り立ちと向き合う必要があった。

まずはあらゆる使い方を許容できる、大きな空間が必要だと考えた。
この佐仁の家では奄美大島において風土と非常に強いつながりのある『土俵』の構造形式を引用・再編集し実現している。
本来の土俵は大きな丸太柱によって大きな方形屋根を支持する形式であるが、現在は大断面の丸太柱は入手困難であり、奄美大島内で入手できる木材は皆無である。そのオルタナティヴ(代替)としてRC壁が木造トラスの方形屋根を支持する形式を考案した。奄美大島に根付いた伝統的建築の構造形式を引用・参照し実現することで、空間体験が風土を想起させ、島で失われつつある過去の建築形式を現代に再接続するのである。

この大きな土間空間を中心として四隅に小さな個室や水回りを配置し、ボリュームが群れをなすような佇まいが島の分棟形式の民家を想起させることを意図した。
これらの小個室や浴室からも外部へ直接アクセス可能となっており、海から直接出入り可能なオーシャンフロントのアクティビティにも対応した形式となっている。

大断面の丸太柱のオルタナティヴであるRCは、台風の頻発する地域性における建築物の堅牢性を担保するうえでも最適な構造といえる。
また、RC壁が水平力を負担することで木造部分に筋交・耐力壁を必要とせず、中心の大スパンは木造トラスで構成することで無柱空間を成立させている。そのため海に面する土間・居室の大開口を木造の耐力壁無しで実現しており、また壁自体が外側にせり出すことにより台風時の飛来物の回避にも効果的である。
そしてRC壁で縁を切った大空間と小空間の軸組は、将来想定される大規模な模様替えにおいて空間の骨子を残しながらそれぞれの部屋の設えを変更できるサステナビリティを持つ。

風土から形式やかたちを導くことは、歴史の中で途切れてしまったヴァナキュラーな空間性を現在に再びつなぎ直す設計行為である。ここ奄美大島にしかない、現代から未来につながる建築の形式を発見したい。もしかするとここに在ったかもしれない、オルタナティヴなヴァナキュラーがその先にあるのだと信じている。

出展・掲載
・九州建築選2025
・建築ジャーナル2026年3月号
・商店建築2024年12月号
・architecturephoto.net(link)

受賞
・2025年度 第19回 建築九州賞(作品賞) 作品賞
・屋根のある建築作品コンテスト2025 U-40賞 最優秀賞

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