















完成:2023年12月
敷地:鹿児島県奄美市笠利町
用途:店舗併用住宅
構造・規模:木造1階建て
敷地面積:471.89㎡(142.7坪)
建築面積:92.05㎡(27.8坪)
延床面積:77.65㎡(23.4坪)
構造設計:円酒昂/円酒構造設計
施工管理:青井実/アオイ・ホーム
建築写真:©石井紀久
奄美空港から市街地へ向かう幹線道路沿いに計画した、仕事を早期退職して第二の人生をスタートするために島外から来島したIターン夫婦のための、延床面積23坪程度の小さな店舗併用住宅である。現在はカフェをメインとして小物の販売も行っている。店名は、スペイン語で「海へ」を意味するal marと名付けられた。
敷地は周辺に店舗が少ない幹線道路沿いの立地である。建設コストを抑えるために小さな建築としたが、車道から認識できる程度の店舗としての視認性も求められた。さらには、【住宅が必要とするプライベート性】と【カフェのパブリック性】の両立や、住宅内において夫妻それぞれ個人のプライベートを作りたいという課題もあり、小さな面積ながらプライバシーの振れ幅が非常に大きいプロジェクトであった。
ここでは『オモテ土間』と名付けた屋根付きの半屋外空間を店舗と住宅の間に挟みこむことで、パブリックとプライベートの切り替えをスムーズにする緩衝領域としての機能を持たせた。それと同時に、もう一つのリビングのような場となることを期待している。住宅内でも夫婦それぞれのプライバシーを重要視するライフスタイルのため、リビングとオモテ土間で個々人の時間を過ごせることがこの小さな家では重要な価値となる。
オモテとは奄美大島の民家にみられる寝室に隣接する客間であり、普段は寝室の延長として使われるなどしていた。これに着想を得たこの半屋外空間は、住み手自身がカフェ店員になり替わるというロールプレイ的プライバシーの切り替えをするための舞台袖としての役割も果たす。
住宅内は水回りを中心に回遊性のあるプランとなっており、その動線がリビングやオモテ土間と接続することでコンパクトな面積ながら多くの居場所を生み出している。
切妻の家形が2つ並んだようなボリューム構成は、店舗に訪れる人が一目で店舗と住宅を分離して認識することができるようにする意図に加え、建築の最高高さを低く抑えることで台風の力を受けにくくなるという構造的メリットも享受している。
谷の部分の雨仕舞については、東側に棟を傾け水勾配を確保しつつ、板金の詳細を現場にてブラッシュアップしながら万全を期して計画・施工に至っている。
仕上げに「素人感」を持たせたいというクライアントの希望から、塗装や家具工事の多くが施主本人の手に委ねられた。内外壁の塗装、店舗内の家具造作、住宅内の棚工事についてはほぼ全て施主自身が仕上げていることで工事コストを抑えることにも繋がっている。その結果として引き渡しからオープンまでかなりの時間を要したが、その間に施主自身が施工に向き合うことでより愛着が増したのであろうか、開店直後から店主に似合った雰囲気を醸し出していたように感じる。
