















完成:2024年5月
敷地:鹿児島県大島郡龍郷町
用途:一戸建ての住宅
構造・規模:木造1階建て
敷地面積:382.33㎡(115.6坪)
建築面積:108.08㎡(32.7坪)
延床面積:89.02㎡(26.9坪)
構造設計:円酒昂/円酒構造設計
施工管理:池畑嘉教+政和豊/政建設
建築写真:©石井紀久
この住宅は祖父の代から所有する広々とした農地の一部を住宅用地に転用し、母・夫婦・子の3世代で共に住む建築である。
最初のヒアリングで印象的だったのは母と一緒に暮らしたいという夫婦の想いと、子供夫婦と孫の暮らしに気を遣う母の、お互いを思いやる心であった。そこで、二世帯住宅というほど大がかりではないものの、一つの住宅ながら親子二世帯の要望をそれぞれ切り離して要望を整理しながら空間としての重なりを作ることで一つの家族の器としての一体感を生むような構成を考えた。
母は自身の部屋で1日を過ごすことが多く、当初の要望の言葉を借りるなら「離れのような部屋が良い」ということと、来客を受け入れる広々とした玄関のような場所が必要だということがわかってきた。
それに対して子世帯は基本的にリビング空間で過ごし、母も含め家族が一緒に過ごす時間を志向した。
住宅としては大きなリビングと小さな個室、という形式が一般的であるがそれでは母と子世帯の分断を解決することはできない。そこでリビングと同じくらいのボリュームの大きな軒下空間が、リビングにも玄関にもなり母の部屋とリビングを繋ぐ平面構成を考案した。裏動線の廊下は行き止まりなくそれぞれの部屋と接続するが、母の部屋とリビングも、縁側を介して緩やかにつながっており、それぞれの部屋の開口計画によって互いの気配を感じるオープンな場所と身を隠せるクローズな場所を生み出している。
この平面を覆うような大きな切妻屋根をかけ、一つの住宅としてのまとまりを生み出した。切妻屋根は勾配の異なる3ブロックに分け、段差部分に設けたガラスから屋内のリビングに自然光を採りこむ形としている。明るい空間には自然と人が集まる。このリビングは、母も気兼ねなく一緒の時間を過ごすことができるような空間を目指した。
この段差のある変形切妻屋根の形状は入母屋とも切妻とも似ているようで違う。集落にある軒の低いトタン屋根の入母屋のような懐かしい形態をどこかで想起させるような、風土に馴染む新たな屋根形状を目指した。
また、台風対策のためにリビングのサッシに設けた雨戸を閉めても頂部のガラスからは自然光が差し込む。台風時に真っ暗になってしまう屋内環境は決して良いものではないと考えているからだ。
頂部のガラスには雨戸やシャッターは設けず防犯合わせガラスと庇によって飛来物の直撃による被害を避けるよう配慮している。
この敷地は農地を転用しているため、敷地外にはまだ農地が残っており、今後土地を手放さない限りは窓の向こうに農園の風景がずっと残っていく。そのため、採光等の条件が今後変わりにくいという特徴もある。住環境としてはとても魅力的な場所である。
縁側という言葉は、「端っこ」という意味を持つ。 ここ赤尾木集落のはじっこの牧歌的な風景が、大らかな屋根が作り出す住宅の縁側と重なってのどかな集落住居の佇まいを作っていくことを期待した。
受賞
かごしま木造住宅コンテスト2025 会長賞
出展・掲載
architecturephoto.net(link)
