完成:2020年10月
敷地:鹿児島県大島郡瀬戸内町
用途:一戸建ての住宅(別荘)
構造・規模:木造2階建て
敷地面積:218.50㎡(66.1坪)
建築面積:73.71㎡(22.3坪)
延床面積:104.34㎡(31.6坪)
施工管理:青井実/アオイ・ホーム
構造設計:円酒昂/円酒構造設計
造園設計:浦田知裕/浦田庭園設計事務所
天窓装飾:寶園純一/KOSHIRAERU
建築写真:石井紀久

奄美大島南部の集落内の、美しい砂浜が眼前に広がる敷地における別荘の計画。

奄美大島の伝統的な建築は、高温多湿や台風災害、またかつての貧困の苦しみといった過酷な風土を乗り越えるため先人が導き出した切実さや力強さがあると感じる。現在失われつつあるこの力強さの遺伝子を継承した建築空間が、この集落に対してもクライアントの別荘としても相応しいと考えた。
そこで、プロポーションからディテールや工法などに、島の風景や建築、あるいは暮らしをコラージュするように統合するプロセスを組み込んで設計をしている。

1階はベッドスペースを除いてほぼ土間であるが、海で遊んで体についた砂を運んできたり、あるいは釣った魚を持ってきたりと、ラフな暮らし・用途に気兼ねなく使うことができる島暮らしのための空間である。
小屋裏は一室40帖の大空間であり、非日常を許容するおおらかな空間として、生活空間である1階の頭上にただ存在している。
かつては食べ物を貯蔵するという生死に関わるシリアスな機能を担っていた高倉(高床式倉庫)のがらんどうな空間は、この建築において人が集まったり子どもが走り回ったり、あるいは何もせずただ波の音を聞く余暇を過ごしたり、そこで許容される行為を豊かにする付加価値的空間へ読み替えられた。
小屋裏の大空間はトラス構造による安定性と、見付面積を抑えることによる耐風圧性能を両立させるために方形屋根形状をベースにしている。
この空間構成が作り出すプロポーションにどこか懐かしさを覚える島っちゅ(島人)は少なくない。
敷地周囲に巡らせた塀は無塗装の杉板をコンクリート柱に落とし込んだだけの作りで、必要に応じて開放することも可能になっている。無塗装のため、はじめは外壁と同じ色の杉板が経年変化でグレーに変わり、より周囲に馴染むようにしている。

頂部は排熱のための機械換気設備と、日よけの装飾木工を設け、室内温熱環境の向上を図っている。また小屋裏の床はすのこ状になっており、自然風とトップライトからの光を1階まで引込むことで空間全体が過ごしやすい環境となる。

住み手が不在の時間が長い別荘建築は、家主が不在の際はどうしても防犯上閉じたものにせざるを得ない。
しかしながら、佇まいに風景の一部としての自然さがあると、建築は集落に溶け込み愛されるものになる。言うなれば、風景の一部として公共性を持つということである。

単なるノスタルジーを超えた、島の遺伝子にささやきかけるような建築を目指した。

出展・掲載
・【】TECTURE(link)
・建築家住宅手帖 instagram @archi_techo_official
・「初出展03」@BankART

コメントを残す